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INTERVIEW

ファインバブル産業会(FBIA)の副会長を務め、FBIA加盟企業であるIDEC株式会社 常務執行役員、C.T.O.の藤田俊弘氏。ファインバブル産業の歩み、そして具体的なIDECのファインバブル事業から、日本がリードして世界を牽引する取り組みについてまで、お話を伺いました。

PROFILE

IDEC 常務執行役員

藤田 俊弘

IDEC 常務執行役員、技術戦略本部長、
IDECグループChief Technology Officer(C.T.O)、
ファインバブル産業会 副会長、工学博士

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ファインバブル産業の歴史と
IDEC

IDECは、1945年に創業し、今年で75周年を迎え、今まで制御技術の総合エキスパート企業として開発に取り組んできました。その事業は、電子制御、電気制御、システム制御、流体制御など、多岐に渡ります。ファインバブル事業は、流体制御に該当し、30年近く研究開発を行っています。IDECは、日本においても、世界においても、ファインバブル産業の先駆け、パイオニアとして、発生技術、計測技術、応用技術、そしてISO規格開発等において、世界をリードし、ファインバブル技術の普及を進めています。

1992年からマイクロバブル、2009年からはウルトラファインバブル事業に注力してきました。ウルトラファインバブルは、本当にそれが「気泡」なのか「粒子」なのか分からない状況でしたが、100nm(ナノメートル)程度のサイズの「気泡」が存在するという事実を、世界で初めて実験的に証明したのが、IDECです。現在、微細な気泡を利用するファインバブル技術が、いよいよ実用化段階を迎え、産業としての骨格ができてきました。

歴史を振り返ってみると、2010年前後には、計測技術の発展と、泡の発生技術の進歩でファインバブル技術の様々な効果が確認され、産業化への動きが急速に進みました。これに対応して、2012年、学会、官界代表者と産業界有志で「ファインバブル産業会(FBIA)」を旗揚げしました。FBIAの優先事業は、世界的な基幹産業となる潜在力を有するファインバブル技術の国際標準化で、産業界の国際競争力を強化する基盤構築を行うことでした。FBIAは、設立当初から国の支援の下、日本主導で国際標準化機構(ISO)に専門委員会(TC)設立を働きかけ、5か国の協力でTC281(ファインバブル技術)を設置。日本が幹事国として運営することになりました。経済産業省の支援の下、各種国際規格を日本主導で提案しました。また、国と製品評価技術基盤機構(NITE)の支援で認証事業も始まりました。

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IDECの
ファインバブル産業について

ファインバブルは、インフラ分野、工業分野、農林水産分野、食品分野、医療分野、薬品分野、一般生活分野など、ありとあらゆる領域で活用されています。IDECは、この中でも、工業分野と農業分野に注力しています。
一つ目の工業分野の代表例としては、例えば車や様々な機械を生産する時に、金属を加工するため研削加工技術が必要になります。「研削」とは、高硬度の研磨剤を焼き固めた研削砥石を高速回転させ、砥粒の角で工作物を少しずつ削っていって、所要の形状、寸法、なめらかな表面状態にする最終仕上げの工程のことです。
研削の工程の際に、ウルトラファインバブルを使うと、とても綺麗に研削でき、精度も向上し、速く加工でき、生産性向上という面でメリットがあります。
目に見えない小さな泡のウルトラファインバブルをクーラント液(機械の冷却水)に使用することで、加工部分の細かい隙間に入り、液の浸透性を上げ、潤滑性、放熱効果をアップさせるからです。研磨屑の除去を促進し、砥石の目詰まりを抑制し、正常に保つことで寿命を長くすることもできます。よって、機械の運転効率も向上します。さらには、酸素をクーラント液に供給することで、嫌気性菌を抑制し、現場の臭いの発生を低減することもできます。

二つ目の将来有望なテーマとして、農業応用が重要です。IDECでは、トマト、イチゴ、レタスの栽培にウルトラファインバブル技術が有効であることをいち早く実証してきました。また東京大学の大下誠一教授と、長年共同研究を行い、基礎的なテーマとして発芽のメカニズムを研究することも行い、それらの成果を既にISO規格として発行しています。農業はSDGsの重要テーマでもあり、ファインバブル技術に大いに期待しています。

具体的には、現在佐用まなび舎農園にて、夢茜(ゆめあかね)というトマトと、それを使ったジュースも生産しています。IDEC最新鋭のウルトラファインバブル生成技術を活用し、ブランドトマトの栽培と、そのトマトを100%使用したトマトジュースの生産を行っています。自然が本来持っているメカニズムに日本初の革新技術である「ウルトラファインバブル水」を与えることで根と微生物を活性化させて養分や水の吸収を促すため、より美味しいトマトができることを推進しています。

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ファインバブルの魅力について

色々な分野においての可能性が、本当に広く深くあり、また興味深い効果があるのはファインバブル技術ならではないでしょうか。まだ解明されていないことも多くあり、大学の先生や世界中の研究者や技術者と共に、基礎研究から産業化まで促進しているところです。
なおかつ、日本がリードして発生技術、計測技術、応用技術を発掘していることに矜持を持っています。経済産業省のご支援のお陰で、国際標準化、国際認証の取り組みも、日本が牽引しています。その根幹の技術が整備されたことにより、BtoBの産業応用に加えて、最近ではBtoCのシャワーヘッドや、お風呂、美容製品、洗濯機など消費者向け製品を中心としたファインバブルの実用化も、日本がリーダーシップを取っています。FBIA会員企業の製品は、認証マークなどを通じてファインバブルの存在や効果などの信頼性を確保しており、そのようなファインバブル技術の裏付けの情報発信が、非常に重要になりつつあります。

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ファインバブル産業のこれから

ファインバブル技術は、幅広い分野での実用化が急速に進む見通しです。タイ、ベトナム、シンガポール、中国など海外でのファインバブル製品への関心もどんどん高まっています。
FBIAは、グローバル市場健全化を目指し、エビデンスベース宣言に加え、認証事業を本格的に拡大し、「規格創成」「認証実施」「市場信頼度向上」「認証ニーズ拡大」の認証サイクル確立をグローバルな視座で進めていきます。
また、メーカーとして、SDGsへの取り組みが必須と考えています。ファインバブルは、SDGsのほとんど全てのテーマに対応するといっても過言ではありません。

ファインバブルは、液体と気体、例えば、水と空気の混合物です。国連は持続可能な開発目標として17項目から成るSDGsを掲げていますが、ごく身近な物質で構成され、洗浄の場合に洗剤や水の使用量を大幅に削減できるファインバブルは、SDGsに最適な技術です。それ以外にも多くの応用がSDGsに関係することから、現在、ISO国際規格に、ファインバブル技術とSDGsの関係性を技術文書として提案しているところであり、まもなくそれが発行されます。この提案も日本がリードしており、2030年のSDGs達成の目標年に世界的な一大潮流となっていることを期待しています。多くの皆さんと協力して、一層推進していきたいと考えています。

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寺坂 宏一教授

慶應義塾大学理工学部

寺坂 宏一教授

化学工学という専門分野でのファインバブル研究のきっかけから、産業界との連携による可能性、そしてファインバブルの未来についてお話を伺いました。

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